完熟と未熟のあいだ(4) 完熟バンザイ?

完熟は美味しい、完熟は素晴らしい!

だけど、ちょっと待ってください。前回わかったように、
恵泉女学園大学教授の藤田智先生によれば、農学における「完熟」の定義は
「タネができる状態まで熟すこと」でした。

この定義に照らしてキュウリやナスやゴーヤー、オクラなど、
私たちがよく食べる野菜が完熟なのかどかを考えてみると……。

まずキュウリはどうでしょう?

朝採りの、まだ表皮のトゲが痛いほど新鮮で瑞々しいキュウリは、
塩もつけずにそのままでも十分に美味しいものです。

さてそのとき、食べてタネを感じるでしょうか?

感じません。
かすかに粒らしきものは見えるけど、タネになりきっていません。

そう、私たちが食べるキュウリは「未熟果」なんです。

品種によって幅がありますが、標準的な品種の場合、完熟するずっと前、
長さ20~25㎝前後で収穫・出荷されます。

ちなみに、キュウリは長さ30~35㎝程度までは、普通の大きさのキュウリよりも
多少、タネが見えてきますが、十分おいしく食べられます。

というか、個人的には普通の大きさのキュウリよりも少しだけ甘みが感じられて、
やわらかくて美味しい、と思うことすらあります。

だからわが家の畑でキュウリが大きくなったときには、
写真のようにモロキュウにして食べることもあります。

話を戻しましょう。

普段食べているキュウリは未熟果だということはわかりましたが、
でも、なぜ完熟させないのでしょう?

細かいことはさておいて、大きな理由は二つです。

一つは、完熟させるまで収穫せずにおくと、
株(植物としてのキュウリの本体)の負担が大きいため、
1本の株から収穫できる本数が減ることです。

営利栽培(プロの農家の仕事)では、これは致命的です。完熟させるには時間がかかり、
その上、とれる本数が減るわけですから、商売としてはうまみがなさすぎる。

もう一つは、完熟させると一般的なキュウリの美味しさが損なわれるからです。

いや、完熟キュウリの名誉のために言い直すと、
別の味わいになる、という表現のほうがいいかもしれません。

完熟期には長さが40㎝以上、直径も10㎝ほどにもなり、黄色くなって
しっかりしたタネができるので、食べるときはタネを除きます。

「おいしくないメロンみたいな味」と言った人がいますが、
自然な甘さがあるものの、果物なの? 野菜なの? というような味です。

これはこれで、けっこう美味しい、と言う人もいますが、
料理での使い回しを考えると、キュウリは未熟なほうがいい。

早くも私たちの「完熟」信仰が音を立てて崩れ始めました(笑)。
だって、こんなに身近な野菜が、未熟果を食べるものだったのですから。

それではナスをはじめ、先ほど挙げたその他の野菜は?

それはまた次回、考えることにしましょう。

今日わかったことは、完熟ばかりがいいわけではない。ということでした。

身の回りでは「完熟」の文字ばかりを目にする昨今ですが、
「未熟」に目を向けてみるのも一興かもしれませんね。

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ひまつぶし野菜夜話

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加藤雅也

『NHKやさいの時間』編集長

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