腰痛症②

腰痛を訴えて医療機関、特に整形外科を受診すると、どのようなプロセスを経て診断に辿りつくのでしょう。常盤台らいおん整形外科(東京・板橋区)院長の小﨑直人先生は、「問診の内容から大まかな見当はつきますが、それでも一番重篤な原因から疑っていくのが基本です」と説明します。

腰痛という症状を示す病気は色々ありますが、一番危険なのは内臓疾患です。小﨑先生も、初診の段階で内臓疾患の危険性の有無を確認しておくことの重要性を指摘します。

「安静にしているのに痛みが持続したり、時間の経過とともに痛みが増強していくような場合は内臓疾患による痛みの可能性があります。筋骨格系の異常による腰痛は体を動かしている時や、座っていた人が立ち上がった時のような“起動時”に起きるものです。また、痛みの強さも、普通は発症時が最も強く、その後は時間が経つにつれて徐々に弱まっていくのが普通です。何もしていないのに痛みが続く、痛みがどんどん強くなる――という症状は、最も警戒を要する状況。大動脈解離のような循環器系の異常や、腎臓結石、尿路結石、さらにはがん性疼痛なども視野に入れて検査をする必要が出てきます」

こうした病気が疑われる場合は、それぞれの病気の分野で専門性の高い医療機関に紹介されることになります。特に大動脈解離のような生命の危機に直結するような病気であれば、極めて高い緊急性を伴います。「たかが腰痛くらい……」と甘く見るのは危険です。
 
ほかにも、腰痛症だけで熱が出ることは考えにくいので、熱がある場合は感染症が疑われます。さらに、「足に力が入らない」といった症状を併発している時には坐骨神経痛の悪化した状態が考えられます。
 
「坐骨神経痛が進展すると、膀胱直腸障害が出ることもあります。この場合は尿が出にくい、出ない、漏れる――などの症状が出ることがあり、初診で把握しておく必要があります。もし、いずれかに当てはまる場合は、問診の際に恥ずかしがらずに医師に伝えるべきです」(小﨑先生)

こうした病気が否定されて、さらに前回紹介した腰椎椎間板ヘルニアや腰椎変性すべり症などの骨格や軟骨などに伴い神経が炎症をおこす疾患でもないことがハッキリして、はじめて「腰痛症」の診断が下されるのです。
 
このように、人間の腰は様々な症状の集積地であり、数多くの疾患が関与する重要拠点でもあるのです。それだけに、異常を感じたら早目に医師の診断を仰ぐことが重要です。くれぐれも“自己診断”は危険ですよ。

長田昭二(おさだ・しょうじ)医療ジャーナリスト。1965年東京都生まれ。日本大学農獣医学部を卒業後、新聞社、出版社勤務を経て2000年よりフリー。新聞、雑誌の他、ラジオ、ウェブ、市民公開講座などを通じて医療情報を発信する。著書に「病院選びに迷うとき~良医と出会うコツ」(生活人新書)、「放っておくとこわいストレス、あぶない病気」(東洋経済新報社)他。ブログは「長田昭二の備忘録」。日本医学ジャーナリスト協会会員。
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この症状にはこの治療?!

この症状、ただの疲れか、重病か?今すぐ病院に行くべきか否か…

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長田昭二

(おさだ・しょうじ)医療ジャーナリスト。1965年東京都生まれ。日本大学農獣医学部を卒業後、新聞社、出版社勤務を経て2000年よりフリー。新聞、雑誌の他、ラジオ、ウェブ、市民公開講座などを通じて医療情報を発信する。著書に「病院選びに迷うとき~良医と出会うコツ」(生活人新書)、「放っておくとこわいストレス、あぶない病気」(東洋経済新報社)他。ブログは「長田昭二の備忘録」。日本医学ジャーナリスト協会会員。

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