認知症①

「おとといの夜は何を食べたかな……」
「あそこで会った人の名前が思い出せない」
「あれ? いま何をしようとしていたんだっけ?」

日常生活で、こんな経験をすることは少なくありません。年齢とともに機会が増えてくる「物忘れ」。老いを感じさせる症状だけに、心配する人は多いようです。
横浜市神奈川区にある「ヨコハマポートサイドプレイス中崎クリニック」の院長で脳神経外科医の中崎浩道医師は、「自分から『心配だ……』と感じて医療機関を受診する人のほとんどは、病的な症状ではありません」と話す。物忘れには、「病的なもの」と「そうではないもの」の二種類があるようです。


 
「物忘れを医学的に“健忘”といいますが、これには“生理学的健忘(良性健忘)”と“病的健忘(悪性健忘)”の二種類があります。生理学的健忘、つまり心配のいらない物忘れの特徴は、体験や経験の一部分の記憶が失われている、ヒントを与えられると思い出せる、自分が物忘れをしていることに気付いている――など。一方、何らかの病気が原因にあると思われる悪性の物忘れの特徴は、体験や経験そのものを忘れている、ヒントを与えられても思い出せない、自分が物忘れをしていることに気付いていない、そしてこうした症状が急速に進行している――など。病的健忘の場合はご本人に病識がないので、家族や周囲の人が先に気付くことがほとんどです」(中崎医師)

つまり、自分で「最近物忘れがひどいな」と思うこと自体が、病的健忘ではないことを示唆していることになるわけです。反対に病的な物忘れの場合は、人から指摘されても「忘れている」ということ自体に気付いていないので、会話が噛み合わなくなります。自分の記憶にないことを周りから「あった、あった」と言われることで不機嫌になったり、周囲に対して攻撃的になることもあるそうです。

中崎医師によると、患者さんが一人で「心配なんです」とクリニックを受診するケースは、まずほとんどが良性健忘。病的な健忘の場合は、家族に伴われて、半ば無理矢理受診させられるようなケースに多く、当然“不機嫌”です。よく言われる「食べた物の献立が思い出せないのは問題ないが、食べたこと自体を忘れているのは問題アリ」というのが実際のところなのです。
 
そこで次回からは、この「病的な物忘れ」の代表格である「アルツハイマー」のことも含めて、中崎先生に解説してもらいます。

長田昭二(おさだ・しょうじ)医療ジャーナリスト。1965年東京都生まれ。日本大学農獣医学部を卒業後、新聞社、出版社勤務を経て2000年よりフリー。新聞、雑誌の他、ラジオ、ウェブ、市民公開講座などを通じて医療情報を発信する。著書に「病院選びに迷うとき~良医と出会うコツ」(生活人新書)、「放っておくとこわいストレス、あぶない病気」(東洋経済新報社)他。ブログは「長田昭二の備忘録」。日本医学ジャーナリスト協会会員。
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このブログについて

この症状にはこの治療?!

この症状、ただの疲れか、重病か?今すぐ病院に行くべきか否か…

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長田昭二

(おさだ・しょうじ)医療ジャーナリスト。1965年東京都生まれ。日本大学農獣医学部を卒業後、新聞社、出版社勤務を経て2000年よりフリー。新聞、雑誌の他、ラジオ、ウェブ、市民公開講座などを通じて医療情報を発信する。著書に「病院選びに迷うとき~良医と出会うコツ」(生活人新書)、「放っておくとこわいストレス、あぶない病気」(東洋経済新報社)他。ブログは「長田昭二の備忘録」。日本医学ジャーナリスト協会会員。

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