園芸家・辻幸治 その1 植物標本をつくる小学生

◆ 辻さんは、なんでこんなに植物に詳しいのか!?

辻幸治さん37歳。山野草を中心に、植物に関する幅広い知識と経験を有し、NHK「趣味の園芸」に講師としても出演している若手きっての園芸家だ。園芸本や雑誌の執筆、監修でも活躍しており、「趣味の園芸」編集部でもずいぶんとお世話になっている。

私は同年代ということもあり、趣味の園芸に関わるようになった当初から、辻さんにいろいろと教えてもらってきた。私の師匠のような存在だ。もう付き合いは8年になる。しかし長く付き合えば付き合うほど、「なぜ、こんなに植物に詳しいのか?」その疑問は大きくなるばかりだった。我慢できなくなった私はついに、辻さんがどうしてこんなに植物を愛してしまったのか、そのことを聞き出すために、千葉県の彼の自宅を訪ねた。

所狭しと植物が植えられた庭を案内してくれる辻さん

所狭しと植物が植えられた庭を案内してくれる辻さん

◆ 母親の一言ではじめた標本作り

「最初は小学校1年の夏休みの自由研究でした。母が、お金かからないから植物採集でもしたら?というので、自由研究を当時住んでいた千葉県の行徳近辺の植物採集にしたんです。私の生まれは大阪で、周りに自然らしい自然がなかったのですが、越してきた当時の行徳は結構野原が残っていて、たくさんの野草が見つかりました」

そして持ち前の探究心が目覚め、辻さんは毎年夏休みの自由研究に植物採集を続け、その植物を標本にした。

「調べたりするのは全然苦じゃなかったですね。親にねだって図鑑を買ってもらって採ってきた植物を同定するのは楽しかったです。子どもなんでお金もないので、ずっと地元の植物ばかり集めていました。市川市では初記載になるような植物も見つけましたよ」

といつのまにか自由研究の植物採集は趣味となりライフワークとなっていった。

辻さんが小学生から作り始めた植物標本作り。ラベルの位置や記載内容も学術標本のルールに則っている

辻さんが小学生から作り始めた植物標本作り。ラベルの位置や記載内容も学術標本のルールに則っている

ウラギクの標本ラベル。平成元年ということは辻さんは中学2年生。

ウラギクの標本ラベル。平成元年ということは辻さんは中学2年生。

「だから僕の基本は分類学なんです。植物を育てる園芸を始めたのは結構遅くて、中学2年からです」

植物を採集し記録することに楽しみを見出していた辻少年が、育てることに目覚め、園芸にシフトしていったのには、じつはある事件があった。その事件とは


(その2へ続く)


辻幸治
辻幸治 つじ・こうじ  園芸家。1976年、大阪生まれ。江戸の園芸文化から海外のワイルドフラワーまで幅広く精通する。「趣味の園芸」にも講師として出演。書籍や雑誌の執筆・監修でも活躍。著書に『色別身近な野の花山の花ポケット図鑑―花色別777種』(栃の葉書房)など。

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