園芸家・辻幸治 その5 園芸の道を志す人へのメッセージ

◆ 園芸の道を歩む次世代へのメッセージ

著作、監修、「趣味の園芸」への出演など、若手実力派園芸家として活躍する辻幸治さん。
次世代で同じように園芸家・植物の専門家を志す若者へのメッセージをもらった。

「植物は非常に数が多く、園芸品種まで含めれば無限にあるといっても過言ではありません。その植物の中で、1割でも見て触って育てることができたら、それは世界最高レベルの植物の専門家といえます。そして日本はそれが個人の努力で達成しやすい環境にあります。南北に長い国土でさまざまな環境の土地があり、育っている植物の種類も驚くほど豊富です。しかも勉強をしたいと思えば許される自由があります。インターネットの普及もあり、さらに学びやすい環境が整いました。しかし、最も重要なのは学びたいと思う強い気持ちです。努力と犠牲を払う覚悟、そこまで植物に全てをかけられる気持ちがなければ、どんな環境でも知識を手に入れることはできません。時間がかかりますが、その努力は必ず報われます。学校の数年間で学べることはたかが知れています。一生勉強のつもりでいつも植物に関心を寄せ、全てを貪欲に吸収してください。今、世界的に日本産の植物と園芸文化への注目が高まっています。皆さんは、その自生の姿や園芸品種たちが簡単に見られる環境にいるのです。一生かかっても全てを見ることができないのですから、時間を無駄にはできません。ぜひ、植物に全てを捧げて下さい」

もう一つ辻さんからメッセージがある。

「私は山野草の仕事が多く、自生地に取材で行くこともあります。園芸は、その愛ゆえに、自生地からの乱獲を繰り返し、多くの植物を絶滅の危機に追い込んできたという暗い歴史があります。種の絶滅に繋がるような乱獲や栽培不能な植物を採集する連中がまだ絶えません。ですから、自生地の情報や場所は特定されないように細心の注意を払うようにしています。貴重な植物の自生地の写真を公開するのは結構な事です。しかし、先に申し上げた事情を鑑みて背景に場所を特定されるようなものは写らないようにする、都道府県以上の情報は入れないなどの注意をするようにしてください。当然の事ですが撮影者が周辺の自然を荒らすような事があってはいけません。繰り返しになりますが、日本はほんとうに豊かな植生に富んだ素晴らしい場所なのです。みなさんと一緒にこの自然の貴重な財産が永く利用できるように守っていきたいと思います」

このメッセージをもって辻幸治さんの記事を締めくくるが、最後に、辻さんの趣味の一つである豆鉢を見せてもらった。

◆ 豆鉢の世界

辻さんが豆鉢で栽培しているチリメンカズラ。大きく育てるだけでなく、盆栽のように、小さく保ち続けるという園芸の世界もある。

辻さんが豆鉢で栽培しているチリメンカズラ。大きく育てるだけでなく、盆栽のように、小さく保ち続けるという園芸の世界もある。

豆鉢とは、その名の通り、とても小さな鉢だ。盆栽の一ジャンルに位置づけられる。
もともと盆栽は、「盆山」「盆景」として、一鉢にいろいろな植物や石などを入れて風景を作り出すものだった。しかし明治~大正には、盆景の要素であった植物を単体で切り離し、単品で育てる盆栽が主流になっていった。その中で、単品になったことで、小型化が可能になり、もともとミニチュアなどを愛する日本人の気質もあって、どんどん小さい鉢が作られるようになっていった。それが豆鉢の由来である(以上、辻さんの解説を山本が要約しました)。

辻さんは、豆鉢に魅せられた理由をこう語る。

「まずは、なんといっても、小さいのにこの完成度。そしてちゃんと底に穴もあり、実際に植物を栽培できるんです。小さい鉢で小さく育てる盆栽というのは、まさに園芸の技術的な挑戦であり、中でも豆鉢で極小に育てるというのは誰が見てもそのスゴさがわかりやすいと思います。そんな理由もあり、ついつい豆鉢に手を出してしまいます」

辻さん自慢の故・大助の豆鉢。

辻さん自慢の故・大助の豆鉢。

現在も存命(辻さんの家の近くに住んでいるという)彦山人の作品。

現在も存命(辻さんの家の近くに住んでいるという)彦山人の作品。

ここまで5回に渡って、園芸家・辻幸治氏の人生や園芸愛について聞いてきた。
普段から仕事ではお世話になっており、そのスゴさはわかっているつもりだったが、
つきない植物の話と、植物にかける強い意思に圧倒された。

最後の園芸を志す人へのメッセージを読むと、相当真面目で熱く、植物以外何も興味がないように感じてしまうが、実は彼はゲーム「ファイナルファンタジー」が好きで、特に7が好きだ、という、全く植物と関係ない僕の知っている情報を付け加えて、この熱い記事を中和して終わりにしたい。


辻幸治
辻幸治 つじ・こうじ  園芸家。1976年、大阪生まれ。江戸の園芸文化から海外のワイルドフラワーまで幅広く精通する。「趣味の園芸」にも講師として出演。書籍や雑誌の執筆・監修でも活躍。著書に『色別身近な野の花山の花ポケット図鑑―花色別777種』(栃の葉書房)など。

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