成長のもやもや 中原淳氏インタビュー(3)

組織人のジレンマ

大宮 料理人や研究者、ライターなどとは違って、組織人の場合は「何者として振る舞うか」を自分だけでは決められないジレンマもありますね。

中原 組織から望まれる方向と自分がやりたいものが一致している人は幸せです。順調に伸びていけるでしょう。しかし、多くの人はそうはいかない。しかも仕事量は多い。日本の組織では30代は生産性の高さを大いに求められます。期待される分だけキツイ、という面はあるでしょうね。

大宮 嫌な仕事でもがんばったら会社から確実に報われる、わけでもありませんからね。

中原 僕らの世代はバブル経済を中学時代にテレビなどを通じて見たのが不幸ですよね。「明るい世の中だな」と思っていたら、自分たちが就職する頃には「失われた10年」になってしまった。シラケちゃいますよね。組織に頼って本当に大丈夫なのか?という気になる。実際に組織に裏切られた人もたくさん見ているから、能天気に組織の言うことだけを聞いているわけにはいかない。

大宮 僕は新卒で入った会社を1年で辞めた経験があります。新卒の5割が3年以内に辞めるような会社で、心身を追い詰められてうつになる人も少なくありませんでした。会社への信頼や愛情を持つ経験ができなかったことを今では残念に思っています。

中原 しんどい仕事を乗り越えるために必要なのは、会社から正当に評価されると信じられて、その先に明るい未来が見えることです。人は機械ではないのだから、組織に対する信頼は不可欠です。一度裏切られた信頼を回復するのは容易ではありません。だから、会社や組織は、従業員の信頼だけは裏切ってはいけない。それは、長期的には、様々な問題を引き起こすのです。

大宮 会社への不信の表れなのか、勉強会や社会人大学院などで築く社外人脈に活路を見出そうとする人が増えている気がします。でも、社外人脈と会ってばかりいても仕事ができるようにはならないと僕は思います。

中原 勉強会は2極化していますね。片方のグループは、何か新しいことを生み出したい「イノベーション系」です。参加するのは課長層以上が多いように思います。自社だけでは進まないようなプロジェクトを抱えていたりして、新しい出会いや知識を求めています。若い参加者は少ないですよね。もう片方は単なる「不安・不満系」。ただし、そんな勉強会は意味ないと言っているわけではないですよ。悩みをはき出して会社を辞めずに済むならばいいじゃないですか。

(次回に続きます)

 

<中原淳さんプロフィール>

東京大学大学総合教育研究センター准教授。1975年、北海道生まれ。東京大学教育学部卒。大阪大学博士。著書に『職場学習論』『経営学習論』(ともに東京大学出版会)、『知がめぐり、人がつながる場のデザイン』(英治出版)など。共著書に『企業内人材育成入門』(ダイヤモンド社)、『リフレクティブ・マネジャー』(光文社新書)など多数。Blog:NAKAHARA-LAB.NET(http://www.nakahara-lab.net/blog/)。Twitter : @nakaharajun

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30代のもやもや

仕事、恋愛、お金…青年と中年の間、30代特有のもやもやをつづる。

ブログ著者

大宮冬洋

おおみや・とうよう
1976年生まれのフリーライター。ビジネス誌や料理誌などで幅広く執筆中。著書に『30代未婚男』(共著/NHK出版)、『あした会社がなくなっても生きていく12の知恵』(ぱる出版)ほか。食生活ブログをほぼ毎日更新中。
〇最新刊『私たち「ユニクロ154番店」で働いていました』(ぱる出版)
〇毎月第三水曜日には、読者の方々との交流イベント「スナック大宮」を西荻窪で開催。

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