icon-mizuno01

煮込みのメリット&デメリット

sDSC_0072 (3)

ときどき、カレー店で、「5時間煮込んだ」とか「10時間煮込んだ」とか、煮込み時間の長さを標榜しているのを目にすることがあります。

煮込みに10時間もかけるのは、素人のなせる業ではないけれど、でも、そうすることが本当にすごいことなんだろうか? 昔からその点については疑問を持っていました。ビーフの塊肉が口の中でほろほろと崩れていくようなあの感触は心地よいものですが、それでカレーがおいしくなっている、という確信は持てなかったんですね。

だから、肉を煮込むことによって、どういう鍋の中に効果や変化があるのかを考えるようになりました。その結果、煮込みにはメリットとデメリットがあるような気がしています。

肉を煮込むと素材に火が通って、最終的にはやわらかくなる。これは煮込むことのメリットです。もうひとつ、メリットを挙げるとすれば、肉の味がソースに溶け出し、ソースがおいしくなる点もあります。

ただ、ここにひとつ、疑問があります。肉の味がソースに溶け出すということは、裏返せば、ソースがおいしくなる分、肉の味が落ちるということを意味しませんか?

文章では説明しきれませんが、図をイメージしてもらいながら説明するとこうなります。左から右へ時間軸があったときに、煮込み始めは、ソースに肉の味は出てません。肉の中に100%、肉の味がある状態。そこから煮込むことによって(時間軸が左から右へ進むことによって)、肉の味は90%、80%、70%と落ちていく。代わりにソースの味は肉の味が溶け出す分、10%増し、20%増し、30%増しと変化していく。

要するに煮込めば煮込むほど、ソースはおいしくなるけれど、素材はおいしくなくなっていくんですね。理論上はそうなると私は考えてます。

撮影・水野仁輔 2012年インド

このブログについて

icon-mizuno01

あしたの『カレーの教科書』

『カレーの教科書』には書けなかった、カレーの奥深さを語る。

ブログ著者

101_nhk1_121012_aos

水野仁輔

みずの・じんすけ◎カレー研究家。1974年、静岡県生まれ。
1999年に出張料理集団「東京カリ~番長」、2008年に日印混合インド料理集団「東京スパイス番長」を結成。これまでのカレーの出張料理の活動は300回を超える。
『カレーの法則』『カレーの鉄則』(ともに小社刊)をはじめ、カレーに関する著書は30冊以上。そのほか自らカレーに特化した出版社「イートミー出版」を立ち上げ、マニアックなカレー本の制作を行なっている。
2013年5月に、これまでのカレー研究の全てを記した『水野仁輔 カレーの教科書』(小社刊)を刊行。

★『あしたのカレーの教科書』、第1シーズンはこちら

このブログの人々

水野仁輔

ブログ最新記事