vegetarian

Session #6 パレオダイエットとランニングについて考える(1)

IMG_3525

2014年、あけましておめでとうございます。

今年もEAT & RUNな1年にしていきたいと思っていますので、どうぞよろしくお願いいたします。久しぶりかつ新年一発目ということで今回はこちらの回顧ネタから。

「2013年で最もグーグル検索されたダイエット」
http://www.huffingtonpost.jp/2013/12/26/most-googled-diets-of-2013_n_4506121.html

※「ダイエット」という英単語はこの記事の冒頭でも書かれているように日本では「減量のための食事」ととられがちですが、本来は「食生活」「食習慣」といったニュアンスなわけで、つまりはこの記事は去年もっともググられた「健康的な食生活」についてということになるでしょうか。

僕が一昨年の12月から3か月ガチで実践した「菜食主義」が10位、その後もゆるくベジを続ける中では、日本人として魚だけは自由に食べる「ペスクタリアン」だったのですが、それが9位と続きます。スティーブ・ジョブスが一時期ハマっていたという「フルータリアン」(栄養学的にはお勧めできないようです)や、日本人としては沖縄食がランクインしているのも興味深いのですが、今回とりあげるのはずばり、1位の「パレオダイエット」です。

実は僕もこの記事を読む以前から「パレオダイエット」を一部実験的に始めていました。きっかけはいろいろあるのですが、似たような糖質制限食のことはここ数年よく耳にしていて、でも菜食主義(すべての栄養素を肉以外でちゃんとカバーする)と違って、栄養を制限するという食事法に不自然さを感じて敬遠していました。でもたまたま去年10月に刊行された『炭水化物が人類を滅ぼす〜糖質制限からみた生命の科学』(夏井睦・著)という新書を、どちらかというと科学的興味から読んでみたんです。そこでは穀物=炭水化物=糖質の摂取を制限することで、肥満や糖尿病や鬱といった慢性病が改善し、より健康な身体になるとして、そもそも人類が農耕を始めたことの功罪へと論が進みます。それで思い出したのが、『Paleo Manifest』というアメリカの本でした。

実はこの『パレオ・マニフェスト』、2012年に『BORN TO RUN』の登場人物でもあるベアフット・テッドが来日した際に話を聞いたことがあって、実際、彼や『BORN TO RUN』の著者マクドゥーガルも推薦の言葉を寄せている一冊。パレオとは日本語にすると「旧石器時代」で、本書は旧石器時代の生活様式に現代人が健康に活きるためのヒントを見いだしていきます。同じようにパレオダイエットとは「旧石器時代の食事法」ということで、様々な要素があるものの、ざっくりとまとめれば、「農耕定住生活を始める以前の食生活に戻ろう」というもの。この場合、農耕に代表されるのは麦や米といった穀物、つまりは炭水化物=糖質となるわけです。

そう考えると「なんだ、糖質制限のことか」となるわけですが、僕が興味を惹かれたのは、そこに『BORN TO RUN』と同じロジックを感じたからです。つまり、同書で描かれた裸足ランニングについて、「人類は何十万年も裸足やサンダルで走っていた。シューズで走り始めたのは高々この30〜40年に過ぎない。だから人間の足はシューズで走るようにできていない」というロジックと、パレオダイエットの、「人類は何十万年も狩猟採集で暮らしてきた。農耕を始めて炭水化物メインの食生活に変えたのは高々この1万年に過ぎない。だから人間の身体は炭水化物の摂り過ぎに適応できていない」というロジックは、確かに相似形をなしています。

僕はロングトレイルではゼロドロップのシューズを履きますが、普段はルナサンダルやVFFで走る裸足系ランナーです。なのでこの手の進化生物学的に人間の本質を探る話には俄然興味が湧きます。もちろん、パレオダイエットが本当に健康的な食事法なのかどうかは賛否両論あるので(ネットで簡単に見つかります)、読者のみなさんもくれぐれも自己責任でお願いします。実際、こうした低炭水化物ダイエットというのは2000年頃アメリカでブームになったアトキンス・ダイエット以降、度々現れては様々な健康的弊害も指摘されて下火になり、また似たようなダイエットが現れるというサイクルを繰り返しているようで、長期的な身体への影響についてはこれからの科学的検証も待たれるところです。

でも、大きなパラダイムとして見ると、農耕以前の低炭水化物食への流れ、というトレンドはますます大きくなっているようです(冒頭のランキングの5位に上ったケトン・ダイエットもその変奏でしょう)。翻訳書編集者として『Paleo Manifest』を日本にもってくるかどうか、それを検討するためにもまずは自分で試してみたい、そういうボディハック的な実験として、僕は部分的ながらパレオダイエットを始めてみた次第です(ヴィーガンもそれで始めたわけで)。でも、それだけなら単に「旧石器時代食が身体にいいらしい」という話で終わりです。僕がパレオに注目するのはそれだけが理由ではありません。EAT&RUNの「ラン」の部分にこそ、このパレオの可能性があると思うのです。そのお話をまたぜひ次回に。

[つづく]

このブログについて

vegetarian

EAT & RUN 日記

走ることで見える食、食べることで見えるラン

ブログ著者

!cid_ii_14018e0ed738fbd3

松島倫明

(まつしま・みちあき)
NHK出版 編集局放送・学芸図書編集部チーフエディター 翻訳書の版権取得・編集・プロモーションに従事。ノンフィクションから小説までを幅広く手がけている。代表的なタイトルにアンダーソン『MAKERS』『フリー』、ヴォネガット『国のない男』、フォア『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』など。『脳を鍛えるには運動しかない!』という本を編集してからは、贅肉をとるためでなくポジティブに走るようになり、『BORN TO RUN』を編集して以来、裸足系シューズやサンダルで走るサブ4ランナーです。ジュレク の『EAT&RUN』の編集中に完全菜食主義の生活を3か月間体験し、メキシコ・コッパーキャニオンのUMCB(80km)でウルトラレース初完走しました。

このブログの人々

304046_10150387669332401_1242443711_s

松島倫明

翻訳書編集部

ブログ最新記事