欧風カレーのルーツがフランスに!?

カレーのないはずのパリで、大変なカレーに出会ってしまいました。
パリでビストロを営むオーナーシェフのダイさんとお話をしたら、あるレストランの名前が挙がりました。「LA COUPOLE(クーポール)」と言います。
「確かラムのカレーがあったはずだけど」。
クーポールは、創業1927年。まもなく90周年を迎えるという老舗です。そんなレストランに創業時からカレーのメニューがあるという。早速訪れました。ゆうに300席はあるんじゃないかという広々とした店内は超満員。30分ほど店内のウェイティングスペースで待ち、席に案内してもらいました。メニューを見た途端、僕は大興奮。だって、各種フランス料理のメニューと共にカレーが並んでいたからです。しかも、「カリード・ラム」というメニュー名だけが太字で特別扱いになっています。
フランスでこんなに堂々としたカレーメニューに出会えるとは思っていなかったから、自ずと期待が高まります。待っていると一台のトローリーがやってきました。インド人(!)の店員さんが銀色の大きなふたを持ち上げると、大なべにラムカレーが煮込まれています。ライスを盛り付け、カレーを盛り付け、付け合わせを添える。その姿はまるで日本の欧風カレーのようでした。ラムはやわらかく、ソースは小麦粉のとろみがきいていてライスによく絡みます。
具にじゃがいもが見えるあたり、まさに日本のカレー。日本から遠く離れたパリでこんなカレーに巡り合えるとは。安心感に満ちた穏やかな気持ちでじゃがいもを口に運ぶ。ん!? 何かが変です。じゃがいもの味がしません。りんごの味がする。まさか、と思って別のじゃがいもらしきものを口に運びます。今度はじゃがいものような味がしました、でもじゃがいもではないような感じもします。
混乱して、店員さんに尋ねました。「この白っぽい野菜はじゃがいもですか?」。返事は意外なものでした。
「りんごとバナナですよ」
りんごとバナナ!?!? 思わず大きな声が出そうになりました。角切りにしたフルーツがラムと一緒に煮込まれたカレーだったんですね。
一緒に行ったカワムラさんにちょっと取材していただいたところ、創業時にたまたまインド人のコックがいたことがキッカケでラムカレーのレシピが生まれ、それを今に至るまで作り続けているとのこと。さらにカワムラさんは、帰宅後、古い文献を掘り起し、なんと、クーポールのカレーのレシピを見つけてくれたのです! 日本のカレーのルーツに直接つながる味ではありませんでしたが、インドの影響を色濃く残すカレーをパリで食べることができたのは、大きな収穫でした。
さて、そろそろイギリスに戻りたいと思います。

撮影・水野仁輔 2014年 パリ

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あしたの『カレーの教科書』~イギリス編

カレー番長、ロンドンに、日本のカレーのルーツを求めて

ブログ著者

水野仁輔

みずの・じんすけ◎カレー研究家。1974年、静岡県生まれ。
1999年に出張料理集団「東京カリ~番長」、2008年に日印混合インド料理集団「東京スパイス番長」を結成。これまでのカレーの出張料理の活動は300回を超える。
『カレーの法則』『カレーの鉄則』(ともに小社刊)をはじめ、カレーに関する著書は30冊以上。そのほか自らカレーに特化した出版社「イートミー出版」を立ち上げ、マニアックなカレー本の制作を行なっている。
2013年5月に、これまでのカレー研究の全てを記した『水野仁輔 カレーの教科書』(小社刊)を刊行。

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