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ロンドンのインド料理レジェンド

あしたのカレー081

そろそろ英国式カレー以外の取材もまとめに入らなくてはなりません。今回のイギリス滞在は、メインテーマが英国式カレー。サブテーマがモダンインディアンです。モダンインディアンレストランは、前半でいやというほど通い詰めましたから、あとは取材をするのみです。取材対象者はたくさんいましたが、時間が限られているため、二人に絞ることにしました。
一人は、Anirudh Aroraシェフ。この滞在で4~5回は訪れたでしょうか。あのトリュフナンを食べた「モーティマハール」のチーフシェフで、そして、モダンインディアンについてほおをピシャリと打たれたような刺激的なお話をしてくださったシェフです。
もう一人は、Atul Kochharシェフ。僕が最も敬愛するインド料理シェフです。「ベナレス」のオーナーシェフ。彼のレシピ本はすべて持ってます。
優秀な編集者の協力のおかげでふたりとも取材をすることができました。Anirudh Aroraは、僕が趣味で作っているインド料理研究本「Labo India」の「LEGEND」シリーズで取材することになりました。彼の調理場に入り、特異のインド料理を6~7品、目の前ですべて作ってもらうという超贅沢な取材です。
興奮しました。シェフも取材する僕がインド料理のマニアックな話についていけることを知って嬉しそうにいろんな話を語ってくれました。どの料理も抜群においしかった。特に僕が好きなサーモン料理を目の前でやってくれたのには感激しました。
Atul Kochharシェフは、ドバイから帰国した直後でさすがに料理をする余裕はなく、お話だけを伺うことに。とはいえ、1時間半ほどの間、「イギリスにおけるモダンインディアンの潮流:について、および、Atul氏自身のインド料理感についてたっぷり話が聞けました。彼は人前で話すことには慣れているようで、僕の経験上、同じ時間で普通の取材で聞ける内容の倍近い情報が得られました。セリフのひとつひとつが納得性の高いもので、イギリスのモダンインディアンの潮流を俯瞰してみることができました。
これらのエキサイティングな取材ができたのは、イギリス在住の多くの知人の協力があってのこと。ふたりの取材を終え、ロンドンの街中を歩く僕の心には彼ら彼女らへの感謝の気持ちでいっぱいになりました。日本にいる時には話をすることすら想像できなかったシェフとじっくり向き合ってインド料理について意見を交わせる。これは貴重な体験でした。
彼ら以外のシェフとも取材とまではいきませんが、言葉を交わす機会は何度かありました。メールで情報交換をし続けたシェフもいました。
「日本への進出に興味があるから、視察に行くときには案内を頼むよ」と目を輝かせて話してくれたシェフもいました。
メインで探求している英国式カレーが見つからなくて寂しい反面、サブテーマのモダンインディアンではこんなに充実したやりとりができるなんて、皮肉なものです。

撮影・水野仁輔 2014年 ロンドン

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あしたの『カレーの教科書』~イギリス編

カレー番長、ロンドンに、日本のカレーのルーツを求めて

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水野仁輔

みずの・じんすけ◎カレー研究家。1974年、静岡県生まれ。
1999年に出張料理集団「東京カリ~番長」、2008年に日印混合インド料理集団「東京スパイス番長」を結成。これまでのカレーの出張料理の活動は300回を超える。
『カレーの法則』『カレーの鉄則』(ともに小社刊)をはじめ、カレーに関する著書は30冊以上。そのほか自らカレーに特化した出版社「イートミー出版」を立ち上げ、マニアックなカレー本の制作を行なっている。
2013年5月に、これまでのカレー研究の全てを記した『水野仁輔 カレーの教科書』(小社刊)を刊行。

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