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フィッシュ&チップスのカレーソース

あしたのカレー083

ロンドンではフィッシュ&チップスをよく食べました。でも、フィッシュ&チップスを食べる時はさすがにカレーからは意識が遠のいていました。
ところが、ロンドン在住のある友人と話をしていたところ、意外な言葉を耳にしたのです。
「フィッシュ&チップスのカレーソースはもう食べた?」
「は!?」
ちょっと面喰いました。そんなものがあるの? その友人に言わせれば、「たいていのフィッシュ&チップス屋にはカレーソースがある」とのこと。嘘でしょう!? 
半信半疑で何軒かのお店を覗いてみました。たいていの店にある、は言い過ぎでしたが、確かにあります。ソースの種類を選ぶときにメニューに「Curry」とある。ノーチェックでした。
もちろん、食べました。ジャパニーズカレーに極めて近い味。それも昔の日本の家庭のカレーといった感じです。カレー粉と小麦粉を炒めて煮ただけ、というようなシンプルな味。とろみが強く、チップスにつけて食べようとするとボトッとソースが落ちるような重たさがあります。
なんの特徴もない味、といった感じです。ひとつ収穫だったのは、インド料理のエッセンスを全く感じないソースだったことです。インド料理のグレービーのようなものだったら、納得しつつも一方で落胆していたことでしょう。でも、このフィッシュ&チップスに添えられたカレーソースは、明らかにイギリス人の手によって開発された英国式カレーの片りんを漂わせています。カレーを作るときに小麦粉を加えてとろみをつけ、シチューのようにする手法は、古いレシピにも出てきます。
おそらく、このカレーソースは、イギリスの家庭である時期に作られていた味がフィッシュ&チップスの世界で採用され、現在に至るのだろうと感じました。大型デパートのフードモールのテーブルで、フィッシュ&チップスにつけたカレーソースを何度も何度も味見し、んんん、とか唸りながら難しい顔をしている日本人は、変な人にうつったかもしれません。
英国式カレーは消えてなくなったけれど、そのカレーソースは、フィッシュ&チップスの脇役として残っているということでしょうか。もう、これから先、イギリスでは英国式カレーは主役にはなりえないのでしょうか。
そもそもがイギリスにおいてカレーが食卓の主役を飾ったことは、あまりなかったのかもしれません。日本のように一家団欒の象徴だったという証拠は少なくとも見たことがありません。なぜ、英国式カレーが昔も今も脇役なのかは、次回、書きたいと思います。

撮影・水野仁輔 2014年 ロンドン

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あしたの『カレーの教科書』~イギリス編

カレー番長、ロンドンに、日本のカレーのルーツを求めて

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水野仁輔

みずの・じんすけ◎カレー研究家。1974年、静岡県生まれ。
1999年に出張料理集団「東京カリ~番長」、2008年に日印混合インド料理集団「東京スパイス番長」を結成。これまでのカレーの出張料理の活動は300回を超える。
『カレーの法則』『カレーの鉄則』(ともに小社刊)をはじめ、カレーに関する著書は30冊以上。そのほか自らカレーに特化した出版社「イートミー出版」を立ち上げ、マニアックなカレー本の制作を行なっている。
2013年5月に、これまでのカレー研究の全てを記した『水野仁輔 カレーの教科書』(小社刊)を刊行。

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