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英国式カレーをイギリスで再現

あしたのカレー085

英国式カレーは、とうとう見つかりませんでした。イギリス滞在も残すところあと数日。もう、諦めます。英国式カレーは廃れて消えて行った。これだけロンドンで探し回ってその片鱗すら見えてこないわけですから、少なくともロンドンにはないと判断してよさそうです。
それはそうとしても、やはり、イギリスはカレー大国です。この場合のカレーとは、インド料理(および、パキスタン、バングラデシュなど周辺諸国の料理)におけるカレーという意味です。ただ、その根付き方は独特で、日本とは全く違います。
なぜなら、インド料理店で働くイギリス人シェフを一人も見たことがないからです。完全に現地の人に任せている状態なんですね。日本は違います。日本人でインド料理に情熱を傾けるシェフが、少なくとも僕の知る限り、全国に150人以上います。東京では、定期的に15人~20人ほどの日本人のインド料理シェフが集まる研究会を実施しているほどです。
イギリスはカレー大国である。イギリス人はカレーが好きである。カレーはイギリスという国に根付いている。でも、イギリス人に本当の意味で浸透しているとはいえないのかもしれません。カレーの世界において、イギリス人はあくまでも消費者なんですね。
そんな中、イギリス人が営むブリティッシュ料理レストランが出版したレシピ本に英国式カレーのレシピが載っているのを見つけました。読んでみると、きわめてインド料理の作り方に近い。こんな風にカレーを提案するイギリス人シェフもいるんだな、と驚きました。
早速、作ってみることに。手伝ってくれたのは、ロンドン在住の友人、めぐみさんです。めぐみさんは自宅近くにある肉屋さんで牛肉の塊を買い、前日にローストビーフを作って家族で食べ、残った肉を翌日のために下準備してくれました。
英国式カレーはローストの残り肉を使うケースが多い。このレシピでも、残った肉をヨーグルトとスパイスでマリネして使うんですね。翌日、僕がめぐみさんのお宅にお邪魔して、下準備のすんだ肉を使って英国式カレーを作りました。
うまかった……。
英国式カレーはおいしくない。という僕の仮説が覆るほどおいしかったんです。ただ、このレシピは、先ほど書いたとおり、きわめてインド料理の影響を色濃く残していますし、現在ロンドンで活躍するシェフの考えた英国式カレーの提案ですから、当時からこの味のカレーが食べられていたとはとても考えられません。たとえば、有名なミセスビートンのカレーのレシピなんかと比べるとその精度の差は歴然としています。
いずれにしても、ロンドンでおいしい英国式カレーを作って食べたのはいい思い出となりました。

撮影・水野仁輔 2014年 ロンドン

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あしたの『カレーの教科書』~イギリス編

カレー番長、ロンドンに、日本のカレーのルーツを求めて

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水野仁輔

みずの・じんすけ◎カレー研究家。1974年、静岡県生まれ。
1999年に出張料理集団「東京カリ~番長」、2008年に日印混合インド料理集団「東京スパイス番長」を結成。これまでのカレーの出張料理の活動は300回を超える。
『カレーの法則』『カレーの鉄則』(ともに小社刊)をはじめ、カレーに関する著書は30冊以上。そのほか自らカレーに特化した出版社「イートミー出版」を立ち上げ、マニアックなカレー本の制作を行なっている。
2013年5月に、これまでのカレー研究の全てを記した『水野仁輔 カレーの教科書』(小社刊)を刊行。

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