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欧風カレーと英国式カレー

あしたのカレー086

欧風カレーってなんだろう? イギリスに滞在することになるキッカケはその疑問でした。
欧風カレーってなんですか? 誰かにたずねたとします。答えはまさに十人十色になるでしょう。「ホテルのレストランで食べるカレー」という人もいるかもしれないし、「家で作る市販のルウカレー」という人もいるかもしれない。欧風カレーをうたう専門店もある。それなのにヨーロッパに欧風カレーは存在しない。不思議な食べ物だな、と思ったんです。
色々と国内を取材しました。絞られたのは3パターンのレストラン。ひとつはホテルのレストランのカレー。ふたつ目は洋食屋さんのカレー、三つ目は欧風カレー専門店のカレーです。
結論から言えば、欧風カレーという言葉は、神保町「ボンディ」が造った言葉です。ボンディは今からおよそ40年前に創業しています。すると、100年近く前から営業をしている老舗のホテルや洋食店のカレーは、欧風カレーとは言いがたい。事実、僕が取材をしたホテルや洋食店でコックは「自分たちの提供しているカレーは、欧風カレーとは違う」と認識していました。しかも、カレーの作り方はどこも全く違うのです。ホテルの作り方、洋食の作り方、専門店の作り方。ここで詳しくは述べませんが、「こうも違うのか!」と衝撃を受けました。
と同時に疑問が生まれたんです。「こんなカレーの作り方をしている国は、日本以外にあるのだろうか?」と。もちろん、この疑問には僕の中では「No」という答えが見えていました。じゃあ、いったい日本のカレーってなんなんだろう? と思ったんです。日本のカレーはイギリスからやってきた。これがカレーの世界では通説だった。僕もこれまでそう説明してきました。でも、そのイギリスのカレーがどんなものだったのかを探ってアウトプットした人はいないんです。なぜ誰も疑問を持って調べようとしないんだろう? 疑問を持たずに「欧風カレー」という造られた言葉だけが独り歩きしているんです。
カレーと名のつくあらゆる書物は、(絶版になった古本も含めて)できる限り手に入れて読みました。どこにも書いてありません。唯一イギリスのカレーについて具体的に触れているのは、「カレーライスと日本人」という新書でしたが、その著者もイギリスに行って英国式カレーを調べているものの、さらりと触れている程度で僕の知りたいレベルの内容ではなかった。(とはいえ、当時としては衝撃的な内容だったとは思います)
これは、僕が行って自分が納得できるまで徹底的に探ってくるしかない、と思ったのが今回のイギリス滞在のキッカケです。
結果、英国式カレーには出会えなかった。でも、これは予測していたことです。見つからないことを見つけにきたようなものなんですね。見つからなかったけれど、かなり深く色々と考察ができました。英国式カレーとはなにか。欧風カレーとはなにか。いま、僕の中では答えがハッキリとしてきています。とはいえ、整理するにはかなりの時間がかかりそうです。

撮影・水野仁輔 2014年 ロンドン

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あしたの『カレーの教科書』~イギリス編

カレー番長、ロンドンに、日本のカレーのルーツを求めて

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水野仁輔

みずの・じんすけ◎カレー研究家。1974年、静岡県生まれ。
1999年に出張料理集団「東京カリ~番長」、2008年に日印混合インド料理集団「東京スパイス番長」を結成。これまでのカレーの出張料理の活動は300回を超える。
『カレーの法則』『カレーの鉄則』(ともに小社刊)をはじめ、カレーに関する著書は30冊以上。そのほか自らカレーに特化した出版社「イートミー出版」を立ち上げ、マニアックなカレー本の制作を行なっている。
2013年5月に、これまでのカレー研究の全てを記した『水野仁輔 カレーの教科書』(小社刊)を刊行。

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