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イギリス最後の食事

あしたのカレー087

ついにロンドンで最後の夜を迎えることになりました。明日は日本に帰国します。イギリス最後の夜の食事を何にするか、迷いました。候補は二つあります。ひとつは、「One Kensington」というレストラン。モダンインディアンレストランの老舗「Tamarind」が、かつて一世を風靡した「Zaika」というレストランをグループ傘下におさめてリニューアルしたレストランです。
ロンドンで人気のあるモダンインディアンレストランは行きつくしたといえるほど足を運びましたが、この「One Kensington」だけは改装中でなかなか足を運べないでいました。最後に訪れておきたいレストランです。
もうひとつの候補は、フィッシュアンドチップスです。これは、特にどこの店がというものはありません。宿泊している宿の真向かいにあるフィッシュアンドチップス屋さんで買って部屋で食べる。どちらにしようか……。
結果は写真をご覧の通りです。やっぱりイギリス最後の夜だから、イギリスを代表する料理を。モダンインディアンも立派にイギリスを代表する料理だと思いますが、やっぱりフィッシュアンドチップス。これがイギリスを代表する料理だというとイギリス人やイギリス在住の日本人の方々にとっては反論があるかもしれませんね。でも、日本で一番有名なイギリス料理は、おそらくいまもフィッシュアンドチップスなんだと思います。
イギリスは料理がまずい、と昔から言われていました。ときにその象徴としてフィッシュアンドチップスが使われてきた印象があります。「あんなものくらいしかないんだよ」と。でも、僕はそこに反論したい。僕がこのイギリス滞在中に好きになったものの第1位はフィッシュアンドチップスです。本当にうまい料理だと思った。さまざまな人のお勧めで、クオリティの高い店ばかり訪れたから、というのも理由のひとつにあるかもしれませんが、宿の向かいにあるなんてことない店のフィッシュアンドチップスとスーパーで買ったビール。こんな幸せな組み合わせはありません。
カレーのルーツを探りに行ったイギリスでの最後の食事がフィッシュアンドチップスだなんて、おかしな話ですが、モルトビネガーの酸味としっかりきいた塩味を堪能しながらカレーのことを考えて夜をすごしました。
消えた英国式カレーを探る旅は、来年、1冊の書籍にまとめて出版する予定です。この連載ではあえて触れなかったたくさんのことも整理して盛り込むつもり。そして、書籍として出版するからには、まだまだ調べなくてはならないことが山ほどあります。それは、日本国内で取材するべきことです。
日本のカレーはイギリスからやってきた。出口のイギリスは取材した。今度は入り口の日本を取材しなくてはなりません。どこへ行けばいいのか。行き先は数え切れないほどありますが、僕があたりをつけているのは、“港”です。明治維新前後、ヨーロッパの食文化は日本の港に来航した船から伝わっているはずです。日本各地の港を旅し、入り口のカレーを突き止めなければなりません。
明日は飛行機、明後日からは港です。いつになったらカレーを探る旅は終わるのでしょうか……?

(おわり)

撮影・水野仁輔 2014年 ロンドン

★『あしたのカレーの教科書』、第1シーズンはこちら

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あしたの『カレーの教科書』~イギリス編

カレー番長、ロンドンに、日本のカレーのルーツを求めて

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水野仁輔

みずの・じんすけ◎カレー研究家。1974年、静岡県生まれ。
1999年に出張料理集団「東京カリ~番長」、2008年に日印混合インド料理集団「東京スパイス番長」を結成。これまでのカレーの出張料理の活動は300回を超える。
『カレーの法則』『カレーの鉄則』(ともに小社刊)をはじめ、カレーに関する著書は30冊以上。そのほか自らカレーに特化した出版社「イートミー出版」を立ち上げ、マニアックなカレー本の制作を行なっている。
2013年5月に、これまでのカレー研究の全てを記した『水野仁輔 カレーの教科書』(小社刊)を刊行。

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