藤川史雄 SPECIES NURSERY その4

◆世界一の植物屋を目指して

会社が始めた園芸店の店長となった藤川さんには、もともと、こんな園芸店があったらというイメージがあった。

「やっぱりダサいよりかっこいいほうがいいんだよ」。

チランジア、観葉植物、サボテン、多肉植物が2棟の温室に所狭しと並ぶ。普通の草花はほとんど売っていなかった。そのスタイリッシュさとマニアックな品揃えは植物好きの間で話題になった。

「でも店長になって3年くらいたって、また、このままでいいのかなーと思っちゃったんだよねー。自分で栽培したいって気持ちもあったし」。植物愛ゆえに、社長とも意見の対立が多くなっていた。程なくして会社をやめた藤川さんは、日本におけるブロメリア(チランジアをはじめとしたブロメリア科の植物のこと)栽培の第一人者のもとで修行したのち、2001年に独立して「SPECIES NURSERY」を立ち上げることとなる。

 

「SPECIES NURSERY」は多摩の川崎街道沿いにある資材置き場の屋上の、たった7坪の温室から始まった。「金がなかったから、温室は暖房しても、自分の部屋には暖房なし。寒い時は温室や車の中で過ごしてたよ」。それから10年、最初に就職した会社で出会い、いつのまにか藤川さんを手伝うようになっていた恭子さんと結婚し、二人の娘もできた。神奈川県中井町に移り住み、近くのラン屋さんの温室を借り、規模も大きくなった。そして2012年、ついに間借りではない、自分の温室を持った。

 

「世界一の植物屋になりたいんだよねー」藤川さんの野望は大きい。

「世界一っていっても規模じゃないよ。でも世界で一番面白い植物屋がいいね」。

新温室は引越しの最中でまだ雑然としていた。この温室、そして農場を、彼は「藤川ランド」と呼んでいる。

まだ引越し中の新温室。ここから「藤川ランド」の伝説が始まる。

 

「同じ志もってるやつらが、どんどん集まってきてくれたらいいよね。で、この藤川ランドの周りを、植物パラダイスにしようぜ。中井町にいけば面白い植物買えるっていって人が集まってくるような。あ、でも同じようなジャンルの植物やってるやつだとライバルになっちゃうから、志は同じでも植物の種類は他のものにしてくれよな」。

と、夢を語りながら、またうれしそうに笑う。

妻の恭子さん曰く「彼がいつも楽しそうだから、ちょっと彼の人生がうらやましい」。

 

イベントに出店している藤川商店で彼に会うことがあったら、見た目はちょっと怖いけれど、勇気を出して話しかけてみよう。植物の育て方や物語について話すときは、きっと幸せそうな顔になっているはずだ。そんな彼の話を聞いているうちに、自分も植物を育ててみようという気になってくるに違いない。

藤川コレクションの一部をご紹介。左上から順に、

ハウオルシア・ロックウッディ Haworthia lockwoodii

エンコリリウムの一種 Encholirium sp.

セネキオ・グロボーサ Senecio globosa

ハエマンサス・ノルティエリ Haemanthus nortieri

「俺の話なんかどうでもいいから、もっと面白い植物いっぱい紹介してよー。そうすれば絶対、小学生の俺みたいに、ハマるやつがでてくるからさー」。

 

 

※藤川さんも、チランジアに関する部分で協力してくださっている
『生活実用シリーズ NHK趣味の園芸 観葉植物と暮らす〜育て方、楽しみ方のガイドブック』(NHK出版 編)は、好評発売中。

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藤川史雄 ふじかわ・ふみお  1968年生まれ。大学卒業後、建築関連会社に就職した数年ののち、 幼少の頃から植物好きだった特色を生かしたいと園芸店へ転職 店舗企画、店長などを経て、チランジア界の第一人者に師事 。2001年SPECIES NURSERY(スピーシーズナーサリー)を立ち上げる 。チランジア(エアプランツ)・多肉植物・その他個性の強い植物を 取り扱い、その普及に努める。『ワンダフルプランツブック1・2』(共著、メディアファクトリー)など、書籍や雑誌の記事監修、協力多数。
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